美容室|経営のポイントとは?失敗する原因、成功のコツを解説!

美容室|経営のポイントとは?失敗する原因、成功のコツを解説!

美容室は人々の生活に密着し、なくてはならないサービスを提供しています。美容室を経営するにあたっては、施設の運営費や維持費、顧客満足度の向上、最新の技術の導入など、さまざまな要素をバランス良く管理しなければなりません。

美容室の店舗数は増加している一方、倒産件数も増えており、美容室業界を取り巻く環境は決してやさしいとは言い難いです。しかし適切な戦略と経営計画があれば、安定した経営を実現することが可能です。経営の過程では、問題解決の手段を常に探し、改善や成功への道を目指す必要があります。このような努力を経営改善と言います。経営改善は、企業の競争力の強化、生産性の向上、利益の拡大、企業価値の上昇など、様々な面で重要なポイントとなってきます。

本記事では美容室の経営を成功させるためのポイントや、経営改善のフローについて解説していきます。

美容室業界の現状 

近年は美容意識の高まりなどの影響で、より美容室の需要が増大しています。厚生労働省が発表した「令和3年度衛生行政報告例の概況」内「生活衛生関係」によると、過去約20年にわたって「美容所」の施設数は右肩上がりに伸び続けています。

店舗数が増加しているため、美容室の競争は激化しているのが現状です。単に髪をカットするだけでなく、ヘッドスパなどのリラクゼーションも充実させる、ネイルサロンも併設する、あえて深夜のみ営業するなど各店趣向を凝らした経営を行っています。

開業にあたって経営方針などをおろそかにすると、黒字化どころか経営に失敗してしまうかもしれません。株式会社東京商工リサーチによると、2023年1月~4月において「美容業」倒産は31件です。これは前年同期の1.4倍にのぼります。支援の効果が薄れるなど、新型コロナウイルス感染症に関連した倒産が多いですが、それだけ美容室業界での生き残りが難しいということを表しています。

美容室の開業費用はおよそ800万円から2,000万円前後と推定されます。加えてランニングコストとしてカラー剤やシャンプー、水道代や電気代など多額の費用がかかるため、美容室の経営を黒字化するまでには時間がかかります。一方で成長し続ける「髪」を扱うため需要は高く、一度獲得した顧客は店舗に通いつづけてくれるため、長期的に考えると利益を生み出しやすいビジネスであることも事実です。そのため、緻密な経営計画、他店舗と差別化されたコンセプトの打ち出しなどの施策を行うことが望まれます。様々な努力を重ねることで経営破綻を避けることが可能となり、安定した経営が実現します。

美容室経営が失敗する原因

美容室の経営を成功させるために、まずは失敗する原因について解説していきます。

運転資金の不足

美容室経営で運転資金が不足すると、当然ながら経営が立ちいかなくなります。

資金不足が起きると設備や機器の修理や必要な商品、材料調達ができなくなり、提供できるメニュー数や品質、施術の効率にも影響が出ます。顧客だけではなく、スタッフにも影響が及びます。給与や福利厚生にも関わるため、美容室にとって優秀な人材の採用や定着が難しくなるためです。マーケティング活動や広告予算も削減する必要性がでてくるため、顧客獲得や維持が困難になり、競争力の低下や顧客離れが起こるかもしれません。

なにより、資金調達が困難になり借金が増加すると、経営の安定性や将来の成長に大きな影響を与えます。

客単価が不適切

客単価が低すぎる場合、収益が不足し利益率が低下します。これにより、経営資金の確保や事業拡大が難しくなります。スタッフの報酬や設備の維持・更新などにも制約が生じ、サービス品質の低下や競争力の低下につながるでしょう。

逆に、客単価が高すぎる場合、顧客の獲得や維持が困難になります。客単価はメニューの価格と強く関連しますが、高額な料金設定が顧客に受け入れられず、需要が減少するためです。結果として、美容室の集客力や収益性が低下し、客単価が低すぎる場合と同様に競争力を失う可能性があります。

経営者の経営知識・マネジメントスキル不足

美容室経営者の知識不足が事業失敗の原因になることもあります。

経営知識の不足は、財務管理や予算立案の困難さ、マーケティング戦略の欠如、効率的な人材管理の難しさなどにつながります。これに伴い、経営の安定性や収益性が低下し、持続的な成長が阻害される可能性があります。

マネジメントスキルの不足は、スタッフの指導やモチベーション管理の課題、チームビルディングの困難さ、効率的な業務プロセスの確立の困難さなどにつながるでしょう。結果として、スタッフの離職やパフォーマンスの低下、サービス品質の低下などが起こることが考えられます。

美容師としてのスキルの高さと経営に関する知識は別物です。独立して店舗を持つ場合、経営者は経営知識やマネジメントスキルを向上させるために、継続的な学習や経験の積み重ねを行う必要があります。

集客、宣伝に力を入れていない

美容室の経営で適切なマーケティング、宣伝活動が行われないと、美容室の存在や魅力が知られず、新規顧客の獲得が難しくなります。また、競合他社が積極的に宣伝を行っている場合、自社の存在が埋もれてしまうかもしれません。

結果として、集客数の減少や収益の低下、顧客離れが進む可能性があります。

スタッフが定着しない

美容室でスタッフが定着しない理由は、様々な要素が関係しています。給与や福利厚生の不十分さ、労働環境の悪さ、キャリアの成長機会の欠如、コミュニケーション不足などがその一因です。

美容師の定着率の悪さは、単純な人手不足はもちろんのこと、経験やスキルの不足、サービス品質の低下、顧客の信頼の減退などをもたらします。また、スタッフの頻繁な入れ替わりはチームの連携やコミュニケーションに悪影響を与え、美容室の雰囲気や安定性にも悪影響を及ぼします。

経営改善をするフロー

経営改善が必要になった場合、以下のようなフローで経営を考え直しましょう。

1.事業環境の分析:現在の店舗状態の把握と、経営上の課題の明示
美容室事業を進める上で、自店の現状を把握し、そこから課題を明確化していくステップが必要です。これは、自己分析と外部環境分析の2つから構成されます。自己分析では、自店の強み、弱み、機会、脅威を見つけ出すのが目的です。一方、外部環境分析では、業界の動き、競合関係、顧客の要望、法的な規定等を理解することが求められます。

2.目指すべき方向性:解決すべき課題への具体的な目標の設定
収入の増加、コストの削減、美容業界での市場占有率の拡大、顧客満足度の向上など、具体的かつ実現できそうな目標を立てることで、より改善へと近づくことができます。

3.改善の戦略:目標達成に向けた改善計画の構築
新しい施術メニューの考案、マーケティング戦略の再検討、ヘアメイク以外の業務の効率化など、多くの手段から戦略を練っていきましょう。そして、その戦略を実行するための詳細なアクションプランを作り、各任務の責任者、期限、必要な資源等と共に明記します。

4.実行と観察:改善計画の実施と進行管理
策定した行動計画に基づき戦略を実行し、その進行状況を定期的にウォッチします。計画を遵守するだけではなく、状況に応じて、行動計画を微調整し、再度検証を行うことも必要です。

5.実績の評価:実施した改善計画が目標達成に寄与しているかの評価
目標達成のための行動が完了した後、その結果を評価します。成功した部分、さらに改善が必要な部分を特定し、次回の経営改善の参考にします。

この過程を繰り返し、継続的に新たな計画を立ててPDCAサイクルを回すことで、経営方針が確実なものとなり、経営の安定や業績の改善につながります。注意点として、実現する可能性が低そうな改善策は導入しても経営改善ができず、むしろ悪化する場合が多いと考えられます。具体的で実現可能な目標は従業員のやる気にもつながります。実現性の高い改善策を立案して経営改善のフローを進めていく必要があります。

美容室の経営を成功させるポイント

実際に美容室の経営を考えるうえで、何をどのように実行、改善するかについて悩む経営者はとても多いと思います。本項では、美容室の経営を成功させる具体的なポイントを紹介します。

リピート率を高める

顧客の満足度が高く、リピーターが多い店舗は、一般的に売上が増加する傾向にあります。1人の顧客が店舗に対して好感を持つと、その人が再来店するだけでなく、他の人々にもおすすめする可能性が高まり、口コミによって店舗の利用者数が増加します。また、新規顧客を獲得するよりリピート率を高めた方が集客コストを抑えることができます。

美容室におけるリピート率の高さは、施術内容、人柄を含めた美容師との相性の良さが強く関連します。技術が優れた優秀な美容師を雇えば解決できそうですが、採用自体が難しい上、顧客の髪質、性格と合うかはその時の状況や個人に依存します。採用以外に経営側ができることとして、シャンプーやカラー剤などの品質にこだわることはもちろん、店舗の雰囲気や施術メニュー、細かいところで言えばドリンクメニューなども充実させて、顧客が心地よく過ごせるサロンづくりを行いましょう。

また、初めて来店する利用者へのクーポンは一般的ですが、2回目以降に利用する顧客に対しても定期的にキャンペーンを提供することで、リピーターを増やすことが可能となります。 ポイントカードを導入し、ポイントが貯まると割引や美容メニュープレゼントなど、リピーターが利用しやすい制度を導入することも効果的です。

ターゲットの再選定

経営戦略の中心となるターゲットは、変更が必要であると感じた場合には再設定するべきです。美容室においてターゲットの再選定を行うにあたり、「年齢層」と「ライフイベントの取り込み」を強く意識することが望ましいです。

年齢層

年齢層の意識は、ターゲットの選定にとって重要です。一口に美容室といっても子ども向け、若い世代向け、働く社会人向け、中高年向けなどでサロンの雰囲気が異なってきます。また、ターゲットの選定により、美容師の選定も異なってきます。ターゲットの年齢層への施術が得意だったり、同じ年代の方がコミュニケーションを取りやすいなどあるためです。

自身の店舗がある地域の年齢層、訪れる客層の分析をした上で、ターゲットを選定することが求められます。

ライフイベントの取り込み

美容室は人々のライフイベントに強く密着しています。結婚式や成人式、卒業式など晴れの日のヘアセットはその最たる例です。式典に備えて着物の着付けまでを美容室で行うこともあります。また、クリスマスの直前、年越し前や長期休み明け直前など、節目に合わせて美容室に行く人も多くなっています。このような顧客心理に紐づくライフイベントを考慮に入れた上でターゲットを選定すれば、経営状態の改善に加え、他店舗との差別化を図れます。

夏休み、卒業、就職活動、結婚など、顧客が人生の各ステージで最高の自分を演出できるようなヘアセットのキャンペーンを提供すると、長期的に店舗を利用する顧客を生みだせます。

コンセプトの再選定

コンセプトも美容室の経営にとって重要であり、変更する必要性を感じた場合には見直しましょう。コンセプトは経営の指針となり、機材の導入、マーケティング、顧客サービス等、ビジネスのあらゆる面で一貫性を保つのに役立ちます。美容室の経営にあたっては、「競合他社と差別化」されたコンセプトや、「閑散期を逆手に取った」コンセプトを打ち出すことが重要となります。

競合他社との差別化

美容室は誰でもイメージしやすく、店舗数が多いがゆえに差別化することが難しい業態です。そのため、他の店舗にはない独自の魅力をもったコンセプトを打ち出すことが必要になります。

例えば、自身の店舗がある地域の年齢層や人々の特性を考慮することは選択肢の一つです。トレンドに敏感な若い人々が多い地域に店舗があれば、最新の美容情報を提供するようなコンセプトだと効果が見込まれます。若い世代はヘアカラーを頻繁にチェンジすることも多いので、髪が傷みにくい施術やトリートメントができる店舗というのも好まれるでしょう。

また、ワンオペで小さな子どもを育てる母親はゆっくり美容室に行けないことがあります。子育て世代が多いエリアの場合、そういったママ層をターゲットにした「小さい子どもがいても美容室でリラックスして過ごせる」というコンセプトも狙い目です。キッズルームの併設や、保育スタッフの常駐を検討してみましょう。

その他、環境や社会に配慮した人々が多く住むような地域では、ヘアドネーションを推奨するなども有効です。

閑散期を逆手に取ったコンセプト

美容室の需要は、年末の12月や卒業式や入学式など節目の時期に高まりますが、繁忙期の直後、たとえば1月半ば以降、2月、4月、11月などは落ち込むといわれています。

しかし、閑散期を逆手に取ったコンセプトを打ち出すことで利益を生みだすことが可能です。むしろイベントや体験会などは、閑散期だからこそ時間を取って開催できると考えられます。例えばヘッドスパの無料体験や、ヘアスタイリングのデモンストレーション、メイクアップセミナーなどです。特にヘッドスパなどの無料体験系のものは「興味があるけど効果があるのか不安だ」という顧客にアピールできます。もし体験会で良さを伝えられたら、次回以降に予約してもらえる可能性が高く、売上に直結します。

ただし、イベントの計画と実施には注意が必要で、目的やターゲットを明確にし、宣伝や広報活動を適切に行うことが重要です。

価格の見直し

価格は低すぎても高すぎても利益が出ません。コスト、サービス品質、顧客のニーズを考慮した適切な客単価を設定することが重要です。

価格の見直し前に、全体的なコストの把握が必要です。初期投資とランニングコストはいくらで、売上はどの程度見込めるかなど、収益と費用の詳細な分析を行いましょう。そして「損益分岐点」、つまり利益が出始めるポイントを明確にしましょう。

料金設定を再検討する際には、競合他社の調査、選んだターゲットとコンセプトに合致したサービスが提供できるかを検討します。美容室は平均して高価格帯のサービスですが、自店のメニュー価格がターゲットにとって高いのか、もしくは利益を見込めないほど低いのかなどの分析を行うことが望まれます。平日早朝の予約は割引適用など、曜日や時間帯によって料金が変わるような価格設定を採用することも効果的です。また、価格は少し高くとも、その分効果が高く、医学的にも髪や頭皮にやさしいサービスの提供を打ち出すことも戦略のひとつです。

客単価の増加

美容室の収益を増加させるにあたって、客単価を増加させることも大切です。コスト、サービス品質、顧客のニーズを考慮した適切な客単価を設定する必要があります。そのため、まず第一にサービスをより充実させましょう。美容室の王道メニューであるヘアカット、ヘアセット、ヘアメイク以外のサービスを行い、付加価値を付けることも検討する価値があります。例えば、ヘッドスパなどのリラクゼーションも充実させる、ネイルサロンも併設するなどです。美容室に来る顧客は総じて美容意識が高いと考えられるため、美容関連の別サービスは興味を持たれやすいでしょう。まつ毛エクステも美容師免許が必要な業種なので、美容室に併設することには親和性があります。

スタッフが働きやすい環境を整える

スタッフの定着を促すためには、適正な報酬体系や福利厚生の整備、働きやすい環境の提供に加え、キャリアパスの構築、定期的なフィードバックやコミュニケーションの改善が必要です。定着したスタッフは技術や知識の向上に貢献し、顧客の信頼を築き、美容室の継続的な成長に寄与します。

美容師は技術職なので、研修中はもちろん免許取得後も継続してスキルを高めることが必要です。そのため、講習やテストなどで営業時間後も時間が拘束されやすい傾向があるのも事実です。仕方のない部分もあり改善が難しいとは思いますが、例えばシフト制を導入し休日の日数を他店より充実させるなど、工夫をしていく必要があります。

システムの活用

新たなテクノロジーやシステムの利用は、業務の適正化、サービス品質の向上、そして新しいものへの関心を抱く顧客の取り込みなど、経営全体の最適化に寄与します。これは、例えば美容室のシャンプー台を最新にするだけでなく、顧客のサロン利用をより簡単にするシステムの導入等、顧客満足度と運営者やスタッフの業務負荷軽減の双方が求められます。

たとえば、オンライン予約システムや自動決済システムの採用は、美容室の店舗運営を効率化させるだけでなく、面倒な予約手続きに伴う顧客の損失を防ぐための手段ともなります。管理業務に追われることなく、スタッフはヘアカットなどに専念することが可能となり、スタッフの手間が削減され、顧客のロイヤリティ向上が期待できます。

マーケティングの強化

企業の発展には、マーケティングへの取り組みが欠かせません。成功したマーケティング戦略は、企業の認知度を上げ、新たな顧客を引きつけ、利用状況や収益に対して直接的に貢献します。さらに、マーケティングの適切な運用により、顧客の趣味や行動をより深く把握し、対象とする顧客に対して最適なサービスを提供することが可能となります。

美容室の集客や宣伝に力を入れるためには、適切なマーケティング戦略の立案やSNSやウェブサイトを活用した情報発信、イベントやキャンペーンの実施などが重要です。顧客のニーズを把握し、魅力的なサービスや特典を提供することで、集客力を向上させることができます。

具体的な例として、YouTubeやTikTokなどの動画配信サイトは幅広い年齢層に閲覧されており、最近では店舗が独自のアカウントを持つことが増えてきています。自店のターゲット層に合わせたコンテンツの制作を通じて、新規の顧客を獲得することができます。美容室であれば、ヘアカットのbefore/after動画や美容師が得意とするヘアカラー、ヘアスタイル画像などを投稿することで、店舗でのサービスを補うと共に、店舗への興味を喚起することが可能です。

美容室の集客・マーケティングを強化し、市場の変動や競合環境の変化に対応することで、安定した美容室運営を行うことが可能となります。

まとめ

今回は美容室経営のポイントについて詳しく説明しました。

実際に美容室を運営していく中で、期待したほど客足や売上が伸びず、さまざまな理由で運営に頭を悩ませる場合があります。こういった状況になったときこそ適切な経営のポイントを理解し、具体的な改善策を段階的に実施していくことが必要となります。

現実的に難しい改善案は避け、他社にはないコンセプトを元にした施策の実施、顧客満足度を向上させる方法の導入など、計画的に進行することが重要です。

効果的な戦略や施策によって、顧客、スタッフ共に快適な美容室の経営を目指してみてください。

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